cineXtools導入事例

迅速な処理でワークフローに貢献 〜オーディオファイルをMXFファイルにインサート

日本テレビ放送網グループの技術総合プロダクションである㈱日テレ・テクニカル・リソーシズ(NiTRo)は、日本テレビが4月からXDCAM運用に切り替えたのに合わせて、ファイルベース運用への取り組みを進めている。同社は、迅速で確実なワークフローを確立するために、東京・汐留地区のMA室に米cinedeck社のインサートエディットソフトウエア「cineXtools」を採用した。

駒路氏(左)と石井氏

cineXtools

NiTRoは、ドラマやドキュメンタリー、報道、情報、バラエティーなど放送番組の制作技術から中継、送出などの技術、ポストプロダクションサービスまでを幅広く提供している。
ポストプロは東京・汐留と渋谷に拠点を持ち、リニアおよびノンリニア編集、MAに加え、CG制作やダビング、デジタイズ、ファイル変換に対応。素材のインジェストから納品まで、8K.4KとHD制作の一貫したワークフローを構築している。

同社は、日本テレビが19年4月からXDCAM運用に完全移行するのに合わせて、ファイルベース運用への取り組みを開始。このうち汐留地区のMA室では、デジタルオーディオワークステーション(DAW)およびミキサー卓を入れ替えるなど機材を更新することで、次世代のポストプロワークに向け設備を再整備してきた。

DAWは、汐留の計7室をすべて、アビッドの「ProTools」最新版にリニューアルした。大型イベントがひと段落ついた1-3月を選び、各部屋を順次工事するなど作業を止めることなく実施したという。

ポスプロ技術部担当部次長の駒路健一氏は、「渋谷で稼働するNiTRo SHIBUYAでは既にProToolsを利用しており、当社の汐留と渋谷拠点、および日本テレビの生田スタジオのシステムを統一することから導入しました。これにより、スタジオ間でのMAデータの受け渡しをスムーズにすることができます」と話す。
また、日テレタワー内で運用するポストプロ設備「SHIODOME 19BOX」では、稼働する「Cスタジオ」と「Dスタジオ」のメインのミキサー卓を、STUDER製「VISTA1」に更新した。
VISTA1は、SHIODOME 19BOXのAおよびBスタジオに既に「VISTA5」が導入されていることから選択した。

MAミキサーの石井康博氏は、「操作性がこれまでと同様であることが理由の1つです。また当社は、生放送用の撮って出しの作業を担当することがあります。これを円滑に進めるには、機材が安定性に優れていることが必要です。VISTAシリーズは冗長性を持ち、復旧が早いといった特徴があり、スタジオサブでも多く使われています」と話す。
また以前の卓よりもコンパクトになったため、3名分のソファーを追加して、大人数での仕上げに対応した。プラグインソフトも新しくなり、さらに高度なエフェクトやノイズリダクション処理をすることができる。
19BOX内の4室のMA用には、以前から利用していた素材共有サーバーのDDP(48テラバイト)も更新した。安定性や使い勝手などを評価しており、引き続き選択した。
システム設計・施工は三友㈱が担当した。

cineXtoolsを導入

DAWをプロツールスに一新するにあたっては、作成したWAVファイルを、編集部門がグラスバレー「EDIUS」で完成させたMXF OP1-aファイルに、どうインサートするのかが課題となった。
石井氏は「ファイルベースでの運用においては、映像ファイルとオーディオファイルを1つのファイルにまとめて完成させることが必要になります。しかしProToolsにはその機能がありません。今後、ファイルで直接納品することになった場合、MA室内で時間と手間をかけることなく、迅速に作業を完結するにはどのようにすべきか考えました」と話す。
このとき、課題解決のツールとして名前が挙がったのが、cinedeck社のソフトウエア「cineXtools」だった。石井氏は「初めてデモを見たとき、数分の短い映像に数秒で音声をインサートできることに非常に驚きました」と感想を述べた。

cineXtoolsは、2016年の米展示会「NABショー」で発表されて以来、映像業界で高く注目されてきた米cinedeck社製のスタンドアロン型ソフトである。
近年、ノンリニアに基づくファイルベース制作が急激に普及する一方で、エクスポートされたファイルに対しての修正や変更時は、再度全体のエンコードとQCをしなければならないなど、時間と手間がかかることが運用上のネックとなってきた。
cineXtoolsは、テープベースでの編集のようにファイル上でイン点とアウト点を指定し、映像や音声を直接インサートすることができる。つまり、変更を組み込むために全体のレンダリングや書き出しを再度する必要がなく、同時に、ファイルのほかの部分は元のままである。このため作業後の確認やQCを短時間で終わらせ、迅速に仕上げることができる。
WAVファイルをMXFファイルに挿入するのも同様に、素早い作業が可能となる。石井氏は、「MA室で実際の素材を使ってテストしていますが、ファイルの選択、チャンネルアサインやイン点アウト点の設定などを済ませれば、実際の処理は、5分程度の尺であれば10秒程度で完了しています」と説明する。
同時に、「現在はXDCAMディスクやステーションのファイルを一度PCに移してから作業してますが、今後、このファイルに直接書き込むことができるようになれば、より使いやすくなると思います」とも話しており、今後の展開を期待している。

同社では現在、ProToolsと同じMac Proにインストールし、7室全室で利用できるよう整備している。また、XDCAMへの書き込みやデッキでのファイル互換に問題がないことは確認済みだ。

SHIODOME 19BOXは日本テレビ局内で稼働するスタジオとして、情報・報道番組の撮って出し映像を多く制作する。このため設備に関しては、迅速性と安定性を通常のスタジオよりも一層高く求めている。ファイルベース運用に向けて同社は今後も段階的に整備していく計画であり、cineXtoolsは、その処理速度の速さと利便性の高さにより、同社の今後のワークフローを支えるものになりそうだ。

cineXtoolsを操作する石井氏

Dスタジオ

VISTA1

cineXtools

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